足首の捻挫とは
運動中に足首をひねった、階段から落ちたなどの場合に足首が痛む場合、「足関節捻挫」が生じている可能性があります。足関節捻挫とは、関節の安定性を保つ靭帯が損傷する外傷です。
靭帯は骨と骨をつなぎ、関節の動きを一定の範囲に制御する働きを持っています。強い負荷が加わることでこの組織が過伸展されるほか、部分的あるいは完全に断裂してしまうこともあります。見た目には腫れや内出血が見られ、強い痛みを伴うことが多く、損傷の程度によっては歩行が困難になることもあります。
足首は、体重を支えながら歩行や走行、ジャンプなど様々な動作を担う重要な関節です。捻挫を放置すると、慢性的な痛みや不安定感が残ることがあり、変形性関節症をはじめとする後遺症を引き起こす可能性も否定できません。また、過去に捻挫を経験した足関節は再発しやすく、日常生活に支障をきたすことがあります。そのため、早い段階での正確な診断と適切な処置が重要です。
足関節捻挫の主な種類
足関節捻挫は、損傷を受ける方向によって大きく2つに分類されます。
回外捻挫(かつての内反捻挫)
足首が内側に強くひねられることで生じる損傷で、足関節捻挫の多くを占めます。特にバスケットボールやバレーボールなど、ジャンプや着地を繰り返す競技において頻繁に見られます。
回内捻挫(かつての外反捻挫)
足首が外側にひねられた際に発生します。身体の接触を伴うラグビーやアメリカンフットボール、レスリング、柔道などの競技で多く見られます。
捻挫の重症度チェック!
自己診断の方法
足首の捻挫は見た目以上に深刻な場合があり、適切な処置を怠ると、慢性的な痛みや関節の不安定性といった後遺症に悩まされる可能性があります。
腫れていないから、痛くないからと放置せずに、整形外科専門医による診断が重要です。
重症度別の捻挫の症状とスポーツ復帰の目安
捻挫は、靭帯の損傷の程度に応じて、重症度が3つに分類されます。
軽度の捻挫(Ⅰ度)
軽度の捻挫では、靭帯が少し伸びた状態です。少し痛みや腫れがあるものの、歩行は可能です。日常生活にはそれほど支障がないため、つい放置してしまいがちですが、実は慢性化のリスクが潜んでいます。
症状
- 靭帯の軽微な損傷(伸びる)
- 軽い痛み、腫れ
スポーツ復帰の目安
RICE処置後、受傷から数日程度でスポーツ復帰できるケースがあります。
中等度の捻挫(Ⅱ度)
中等度の捻挫では、靭帯が部分的に切れた状態です。強い痛みと腫れがあり、内出血(いわゆる「あざ」)が見られることもあります。歩行は困難になり、関節が少しぐらつく不安定感も出てきます。
症状
- 靭帯の部分断裂
- 強い痛み、腫れ
- 内出血
スポーツ復帰の目安
RICE処置後、受傷から3週間程度で足首にサポーターなど装具を付けながらのスポーツ復帰が可能です。
重症度の捻挫(Ⅲ度)
重度の捻挫になると、靭帯が完全に切れてしまった状態です。激痛とともに、患部は大きく腫れ上がり、内出血も広範囲に及びます。歩行は不可能で、関節が大きくぐらつき、不安定な状態になり、手術が必要となる場合があります。
症状
- 靭帯の完全断裂
- 激しい痛み、腫れ
- 広範囲の内出血
- 歩行不能
- 関節の不安定性
スポーツ復帰の目安
手術が必要な場合は、連携している高度医療機関にご紹介させていただきます。術後は当院のリハビリテーションに通院していただくことも可能ですので、お気軽にご相談ください。当院のリハビリでは、装具を付けたまま、可動域の改善や筋力の回復などのリハビリを行い、受傷から約4~6週間程度でジョギングといった軽い運動に移ります。徐々に運動量・強度を増やしていきながら、競技特性に合わせたリハビリを続け、最終的には、術後約8~12週間でスポーツ復帰を目指します。
重症度をセルフチェック
捻挫の重症度をチェックするために、重要なセルフチェック項目を5つご紹介します。これは、オタワ足関節ルールと呼ばれる骨折のスクリーニングテストの一部です。4歩以上歩けない場合は、骨折の可能性が高いため、すぐに当院までご相談ください。
① 外くるぶしを押すと痛みがあるか
外くるぶしは、足関節の外側に位置する骨の突出部分(腓骨外果)を指します。この部位を圧迫した際に痛みが生じる場合、外側の靭帯、特に前距腓靭帯や踵腓靭帯の損傷が疑われます。捻挫の有無を確認するうえで重要な所見となります。
② 内くるぶしを押すと痛みがあるか
内くるぶしとは、足首内側にある脛骨内果という骨の突出部を指します。この部分を圧迫して痛みがある場合、内側側副靭帯(デルタ靭帯)の損傷が考えられます。また、内反よりも外反による足関節捻挫や、稀に骨折の可能性も否定できないため、注意が必要です。
③ かかとの小指側の骨の出っ張り付近を押すと痛みがあるか
かかとの外側、小指側の骨の出っ張り部分を押して痛みがある場合、踵骨の外側突起に損傷や骨折がある可能性が考えられます。特に転倒や強い衝撃が加わった直後であれば、早急な評価が必要です。
④ 舟状骨(足背から内側にかけての部分)を押すと痛みがあるか
足の内側、土踏まず上方に位置する舟状骨は、体重移動時に重要な役割を果たす骨です。この部位に圧痛がある場合は、舟状骨の疲労骨折や外傷性骨折の可能性があり、適切な画像診断が求められます。
⑤ 怪我をした側で4歩以上その足に体重をかけることができない・歩けないか
けがをした側の足で4歩以上、体重をかけて歩くことができない場合は、骨折のリスクが高いとされています。このような症状がある場合は、我慢せず、速やかに整形外科などの医療機関を受診することをおすすめします。
足首の捻挫(足関節靭帯損傷)
の検査・診断
一般的に問診や触診だけでも診断可能ですが、骨折など他の疾患との鑑別のため、X線検査・超音波検査などの画像検査を行うことがあります。
問診・触診
痛みの程度や性質、発症時の状況について、詳しくお伺いします。受傷のきっかけや動作、痛みが出現したタイミングなどの情報は、正確な診断において非常に重要です。
加えて、触診では足関節の状態を確認するために、特に外くるぶし(腓骨外果)の前方および下方に圧痛や腫れが認められるかどうかを丁寧に調べます。これにより、靭帯損傷や骨折の可能性を把握し、必要に応じて画像検査の実施を判断します。
X線検査(レントゲン)
骨折の有無を評価するために、X線(レントゲン)検査を実施します。特に、骨の異常や骨折線の有無を確認することが重要です。
また、靭帯損傷が高度であると考えられる場合には、関節の安定性を評価する目的で「ストレス撮影」と呼ばれる検査を行うことがあります。これは、関節に一定の力(ストレス)を加えた状態でレントゲン撮影を行い、靭帯のゆるみや損傷の程度を確認する方法です。
超音波検査(エコー検査)
骨折が確認されなかった場合には、超音波検査(エコー)を用いて、レントゲンでは映らない筋肉・腱・靭帯といった軟部組織の損傷や、内出血、炎症の有無を評価します。超音波検査は、関節を実際に動かしながら行うことができるため、組織の動的な状態を観察できる点が特徴です。これにより、損傷の程度や関節の機能障害の有無をより詳細に把握することが可能となります。
また、損傷の範囲が広い場合や、より精密な診断が必要と判断された際には、MRI検査を実施することもあります。なお、MRI検査が必要とされた場合には、提携する専門医療機関をご紹介いたします。
足首の捻挫の治療法
ほとんどの足首の捻挫(Ⅰ度・Ⅱ度捻挫)は、手術の必要はありません。そして、Ⅲ度捻挫(重症)の場合には、保存療法では完治できない可能性があります。
当院では、安静後、早い段階から運動療法や理学療法などの早期のリハビリテーション治療を行い、機能・筋力低下を予防して早期復帰を目指します。
保存的治療
受傷した際に、適切な固定や安静期間を設けて靭帯を回復させないと、関節の不安定感が残る・捻挫を繰り返しやすくなるといった状態を引き起こすことがあります。さらに、治療不十分な状態で競技復帰した場合、軟骨変形や足関節のインピンジメント症候群(関節がうまく動かせない状態)など深刻な後遺症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。固定後は松葉杖を使用し、歩行が安定するまで続けます。
安静・固定
RICE処置を行った後、捻挫の程度に応じて適切な固定方法を選択します。軽度の捻挫(Ⅰ度捻挫)では、テーピングやサポーター、弾性包帯を使用して患部を固定します。中等度の捻挫(Ⅱ度捻挫)の場合、シーネ(添え木)による固定を行い、重度の捻挫(Ⅲ度捻挫)ではギプスを用いた固定が必要なこともあります。軽症の場合、安静期間は通常2〜3日程度ですが、中等症や重症の場合は数週間にわたり安静を保つことが求められます。
薬物療法
アイシングの代わりに、氷や保冷剤の使用ではなく「湿布」を使用することで、腫れや熱感の軽減を図ることができます。湿布は患部に直接貼ることで、冷却効果を提供し、炎症を抑える役割を果たします。
リハビリテーション
リハビリテーションとは、医師の指示のもと、国家資格を持つ理学療法士と共に、運動療法(ストレッチなど)や物理療法(温熱療法、電気療法、装具の使用など)を行い、機能回復を目指す治療法です。
足関節捻挫の場合、受傷直後の急性期(受傷からおおよそ2週間程度)から、患部外でのトレーニングを開始します。痛みや腫れが軽減し、足を引きずることなく歩行できるようになった段階で、バランスや筋力の低下を防ぐためのストレッチやトレーニングを実施します。経過に応じて、運動強度は段階的に増加させていきます。
外科的手術
繰り返す捻挫のうち、関節の不安定性が顕著な「足関節不安定症」に対して、外科的手術である「靭帯修復術」が選択されることがあります。通常、この手術は時に関節鏡下で行われ、外くるぶしの周囲に数か所の小さな切開を加えて、関節鏡を挿入します。関節鏡を通じて靭帯損傷の状態を確認しながら、損傷した靭帯を糸で縫い合わせて修復します。
手術が必要と判断された場合、検査・診断結果に基づき、適切な高度医療機関へのご紹介をさせていただきます。
足首の捻挫を
早く治すためには?
捻挫は、靭帯の損傷の程度に応じて、適切な治療法を選択することが重要です。自己流で処置を行うと、症状が悪化し、治癒までの期間が長引いたり、後遺症が残るリスクが高まります。そのため、専門的な治療を受けることが、早期回復と後遺症予防には欠かせません。
RICE(安静、冷却、圧迫、挙上)で応急処置
捻挫直後の応急処置で最も重要なのは、RICE処置です。RICE処置は、以下の4つのステップで構成されています。
1. Rest(安静)
まず、捻挫したかもしれないと思ったら、安静にしましょう。
捻挫をした足首は、非常に繊細な状態にあり、まるでガラス細工のように壊れやすいものです。無理に歩いたり、体重をかけたりすると、損傷した靭帯にさらに負担がかかり、症状が悪化する恐れがあります。そのため、松葉杖や車椅子などを利用して、患部に負担をかけないようにすることが重要です。もし、どうしても日常生活で歩行が必要な場合は、足首を固定するためにサポーターやテーピングを使用することで、負担を軽減することができます。
2. Ice(冷却)
氷水を入れた袋や保冷剤をタオルで包み、患部を15~20分程度冷却します。冷却は、炎症による熱や腫れを抑え、痛みを和らげる効果があります。凍傷を防ぐため、氷を直接皮膚に当てないように十分注意しましょう。この冷却処置は、1~2時間おきに繰り返すことが推奨されます。なお、冷たい湿布では十分に冷却効果が得られないため、必ず氷や保冷剤を使用してください。
3. Compression(圧迫)
弾性包帯などで患部を適度に圧迫することによって、腫れや内出血の広がりを抑えることができます。内出血は、まるで水風船のように皮膚の下に血液が溜まることで発生します。圧迫を行うことで、この「水風船」の膨張を防ぐことができます。
ただし、包帯をきつく締めすぎると血行が悪くなり、指先の色や感覚に影響を及ぼすことがあります。そのため、圧迫具合は慎重に調整し、指先の色や感覚に注意を払いながら確認しましょう。もし指先に鈍さを感じたり、色が変わったりした場合は、すぐに包帯を緩めて血行を改善してください。
4. Elevation(挙上)
患部を心臓よりも高い位置に挙げることで、血液の循環を促進し、腫れや痛みの軽減が期待できます。この方法は、重力の影響で足に溜まりやすい血液を心臓に戻しやすくする効果を利用しています。
クッションや枕を使って、無理のない姿勢で足を高く保つようにしましょう。就寝時にも、足を心臓より高い位置に保つことで、さらに効果的に腫れを抑えることができます。
テーピングをする
テーピングは、捻挫後の不安定な足首を支え、安定させるために効果的な方法です。テーピングにはさまざまな種類がありますが、ここでは基本的なホワイトテープを使った固定方法を紹介します。
- 足首を90度の角度に保ちます。
- くるぶしの下から、かかとを包むようにテープを巻きます。まるで足首を優しく包み込むように、しっかりと固定します。
- 足の裏から、土踏まずを支えるようにテープを斜めに貼り上げます。土踏まずは、足の裏のアーチ状の部分で、歩行時の衝撃吸収に重要な役割を果たしています。
- くるぶしの周りを、8の字を描くようにテープで固定します。くるぶしは、足首の骨の出っ張り部分で、捻挫時に特に負担がかかりやすい場所です。
- 足首全体を覆うように、テープを巻き上げます。
テーピングは、きつく締めすぎると血行が悪くなるため、適度な強さで巻くことが非常に重要です。また、皮膚に直接テープを貼ると、かぶれを引き起こす可能性があるため、アンダーラップなどを使用して保護することをおすすめします。当院では、患者様の症状に合わせて適切なテーピングの指導を経験豊富な整形外科専門医・理学療法士・柔道整復師・アスレティックトレーナーが一人ひとり丁寧に行います。後遺症を残さないためにも適切なテーピングを行い、早期治療を目指しましょう。